アトピー性皮膚炎犬にファインバブル入浴は効果的か?【論文紹介】

アトピー性皮膚炎犬にファインバブル入浴は効果的か?【論文紹介】

皮膚

ファインバブル入浴


愛犬にナノバブルとかファインバブル入浴って意味あるの?

診療中、飼い主さんからのご質問

愛犬用のナノバブルとかファインバブルの入浴サービスがあります。これって、効果あるのでしょうか?

結論:汚れは落ちて、皮膚バリア機能に影響がほとんどないから有効と考えます。特に、皮膚病というほどではないけれど、市販のシャンプーを使うと肌が赤くなって気になるという子には5分間のシャンプーと15分間のファインバブル入浴は同等の効果が期待できるので、お風呂に入れる子にはおすすめです。この後紹介する論文は「アトピー性皮膚炎の犬でシャンプー療法とファイナブル入浴ではどちらが効果的か?」という比較実験ですが、多少症状が緩和されるが、劇的な治療効果は認められませんでした。皮膚疾患を劇的に改善するほどの効果はありませんが、皮膚バリア機能に負荷をかけずに皮膚の汚れを落とすという点において、ファインバブル入浴は有益と考えます。

須崎家のお風呂はファインバブルのお風呂

実は須崎家のお風呂はファインバブルのお風呂です。

例えば、僕が入院して退院後、2週間とか2ヶ月ぶりに入浴することになることがあります。

もちろん、身体をボディタオルでゴシゴシ洗った後で入浴するのですが、終わればお風呂が垢でドロドロになっていて、効果を感じると共に「こんな汚れてたんだ…」と現実を突きつけられるものです…。

正直、ジェットバスのような粟野刺激があるわけではなく、ただ「モヤァ」っと細かい泡が出てくるだけなので、「こんなので汚れが落ちるの?」が最初の正直な印象です。

でも、終わってみればしっかり汚れが落ちているので、「不思議…」という印象になります。

終わった後、肌がヒリヒリするわけでもなく、「何も変化が無い」のですが、汚れは落ちている…

個人的に自宅に導入してよかった装置で、これからも毎日お世話になる予定です(^▽^)V

そんな個人的な体験から、ナノバブルとかファインバブルのお風呂には肯定的な感想しかありませんが、実際にこれを実験した論文があるので、ご紹介いたします。

アトピー性皮膚炎の犬にシャンプー療法とファインバブル入浴ではどちらが効果があるのか?

今回ご紹介する論文は

Preliminary evaluation of a commercial shampoo and fine bubble bathing in the treatment of canine atopic dermatitis: A single-blinded, randomised, controlled study. Norihito Taguchi, et al. Vet Dermatol. 2024 Aug;35(4):400-407.

犬のアトピー性皮膚炎の治療における市販シャンプーとファインバブル入浴の予備評価:シングルブラインド、ランダム化、対照研究

という論文です。

「アトピー性皮膚炎の犬にファインバブル入浴は低刺激シャンプーでの洗浄群と比較してどんな影響をもたらすのか?」という実験です。

【実験方法】

●アトピー性皮膚炎と診断された17頭の犬は無作為にファインバブル入浴群またはシャンプー群に割り当てられました。

●治療は週に1回、合計4週間にわたって4回実施されました。

●試験の結果を評価するために、開始日(D0)と28日目(D28)に評価が行われました。

●アトピー性皮膚炎の重症度はCADESI-04で、かゆみの指標は視覚アナログスケール(PVAS)を使用して測定されました。

●治療前後に皮膚バリア機能のパラメータである経表皮水分損失(TEWL)と角質層の水分量が測定されました。

【結果】

●両治療群は重症度の指標であるCADESI-04スコアの低下傾向を示しましたが、

●試験1ヶ月後にはファインバブル入浴群がシャンプー群と比較して顕著な改善を示しました。

●どちらの群でも痒みの指標であるPVASスコアに有意な変化はありませんでした。

●治療による皮膚バリア機能の指標に顕著な違いはありませんでしたが、

●治療後のTEWLはファイバブル入浴群で若干減少し、シャンプー群では若干増加しました。

【結論および臨床的意義】

これらの結果は、ファインバブル入浴治療がアトピー性皮膚炎の犬に対して若干のメリットがあり、頻繁なシャンプー療法と比較して皮膚バリア機能に対する影響が少ない代替的な局所治療オプションであることを示唆しています。

という内容なのですが、簡単にまとめると

症状の重症度スコアが有意に減少するものの

かゆみのスコア(PVAS)、経表皮水分損失量(TEWL)、角質層水分量(SSH)には明確な変化は見られませんでした。

シャンプー治療群では有意な改善は認められませんでした。

試験期間中、ファインバブルシャワーやシャンプーの使用に関連した副作用(有害事象)は一切報告されませんでした。

ですから、「劇的なアトピー性皮膚炎の治療効果」は特になかった、という結論になります。

健康な犬では15分間の入浴が5分間のシャンプーと同等

ファインバブルによる洗浄効果については、健康な犬を対象とした実験では、1〜100μmのマイクロバブル(MB)で15分間入浴することで、5分間のシャンプーと同程度の洗浄効果が得られるという結果が出ています【1】。

また、ウルトラファインバブルは、緑膿菌の細胞壁を壊し、殺菌効果を示すことも研究で明らかになっています【2】。

界面活性剤を含むシャンプーは犬の皮膚バリア機能を損なう

また、最近の研究では、たとえ保湿成分を含むシャンプーであっても、界面活性剤を含む洗浄剤が犬の皮膚バリア機能を損なう可能性があると指摘されています【3】。

このことから、ファインバブル入浴だけで洗浄する方法は、皮膚にやさしい選択肢になりうるのです。

ファインバブルが皮膚の汚れを落とすしくみ

ファインバブル入浴は、気泡が水面で破裂する際に生じる【 マイナス電気の働き(負の電解作用) 】によって、皮膚表面の汚れを引き剥がすしくみで、界面活性剤に頼らずに高い洗浄力を発揮することが示されています【4】。

このため、シャンプーと同等か、それ以上の皮膚の清潔さが得られる可能性があるのです【1】。これに関しては須崎は個人的な経験上、激しく同意いたします。

ファインバブルは、被毛や皮膚からアレルゲンや微生物を物理的に除去

さらに、ファインバブルは、被毛や皮膚からアレルゲンや微生物を物理的に除去することで、アトピー性皮膚炎の症状緩和につながる可能性があります。

これらの予備的な結果から、ファインバブルはアレルゲンの管理や皮膚の微生物バランスの調整にも有効な方法となる可能性があり、従来のシャンプーや殺菌シャンプーよりも良好な結果が得られるかもしれません。

ファインバブル入浴はシャンプー療法と比べて皮膚バリアへの影響が少ない

本研究の主な目的は、皮膚の清潔を保ちつつ、皮膚バリア機能に負担をかけない治療方法を見つけることでした。

その結果、ファインバブル入浴は皮膚にやさしく、高い許容性があり、アトピー性皮膚炎の犬の症状改善にもつながる可能性があることが示されました。

特に、頻繁なシャンプーに比べて皮膚バリアへの影響が少ないことが大きな利点です。

アトピー性皮膚炎じゃないけどシャンプーすると皮膚が赤くなる…

今回の論文は「アトピー性皮膚炎の犬」が対象でしたが、【 わりと健康な皮膚だけれど、市販のシャンプーを使うと皮膚が赤くなる 】というケースがあります。

そんなときは、ファインバブル入浴をして皮膚の汚れを落とし、落としきれない汚れがあれば、【 須崎動物病院の低刺激性シャンプー マジカルシャン 】を使ってみるのもいいかもしれません。

以上、ファインバブル入浴はシャンプー療法同等に汚れを落とし、皮膚バリア機能にも影響が少ない!というお話でした。ぜひ、積極的にご活用下さい。

参考文献

1) Shimada K, Iwasaki T. Comparative study of microbubble wash system and regular shampooing in the effect on detergency and skin barrier function of dogs (FC-17). Vet Dermatol.2020;31(S1):31.

2) Yamada H, Konishi K, Shimada K, Mizutani M, Kuriyagawa T. Effect of ultrafine bubbles on Pseudomonas aeruginosa and Staphylococcus aureus during sterilization of machining fluid. Int J Autom Technol. 2021;15:99–108.

3) Esumi M, Kanda S, Shimoura H, Hsiao Y-H, Iyori K. Preliminary evaluation of two bathing methods for the management of Malassezia overgrowth in dogs with atopic dermatitis. Vet Dermatol. 2021;32:228 –e59.

4) Zhu J, An H, Alheshibri M, Liu L, Terpstra PMJ, Liu G, et al. Cleaning with bulk nanobubbles. Langmuir. 2016;32:11203–11.

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