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不妊手術をしたのに乳腺腫瘍→転移
「不妊手術したら、乳腺腫瘍にならない」と当時のかかりつけ獣医師に言われ、生まれ持った臓器を摘出するのに抵抗はありましたが、ガンになるよりはいいだろうと信じて手術したら、その七年後に乳腺腫瘍になりました。ならないと言われたのでショックでしたが、なったものは仕方ないと、手術で切除しました。先生は「全部取り切れた!」と言われたので安心しましたが、その二週間後に別の乳腺にシコリがみつかり、再手術を進められています。ことごとく裏切られた気持ちで、西洋医学が信用出来なくなりました。
という飼い主さんが愛犬を連れて来院されました。
その方は、よほど精神的に辛かったのでしょう、お越しになり、経緯を話しながら泣いていらっしゃいました。
「不妊手術したら、乳腺腫瘍にならない」は間違い
確かにお気持ちは解りますが、ただ一つの動物病院での経験で、全てを語るのはどうかと思います。
また、「不妊手術したら、乳腺腫瘍にならない」のか「なりにくい」のかはわかりませんが、多くの動物病院で不妊手術を勧める理由にもなっております。
でも、私は「不妊手術したら、乳腺腫瘍になりにくい」はまぁ良しとして、「不妊手術したら、乳腺腫瘍にならない」は間違いだと診療経験上申し上げられます。
まず、当院には全国から選りすぐりの具合の悪い犬猫、打つ手無しといわれた犬猫、余命宣告された犬猫が、諦めの悪い飼い主さんに連れて来られます。
その結果、健康診断的な診療はほとんど無く、かなり厳しい状態の子達の診療をさせて頂いております。
だからなのかはわかりませんが、実際、不妊手術をしたのに乳腺腫瘍になって連れて来られる犬猫は珍しくありません。
そんな子ばかりやって来るので、私の認識が偏っていることは百も承知で申し上げますが、当院では不妊手術をすることと、乳腺腫瘍になるならないは別の問題!と考えます。
原因療法的に乳腺腫瘍を調べるとわかること
また、当院では症状を消すことを診療のゴールとはしておらず、原因を取り除いて、症状が出る理由をなくすことをゴールとしている原因療法に取り組んでおります。
ですから、一頭一頭「そうなった根本原因(浅い原因ではなく)」を丁寧に探って取り除くわけですが、乳腺腫瘍になる特定の根本原因があるわけではありません。
一頭一頭違う場所に違う根本原因があるので、変に一例をあげたりすると誤解を招きかねないので差し控えますが、調べれば必ずあります。ホルモン系だけの原因ではないのです。
それが、乳腺の中にあるならば、外科的切除で根本原因も取り除けますが、乳腺から離れたところにあると、せっかく切除しても原因は残ったままなので、今回のケースのように二週間ほどで再発したりします。
ですから、手術が悪いのではなく、根本原因を残さないようにすることが大事だと考えます。
獣医師と飼い主さんには解釈のズレがある
この方もそうですが、不妊手術をしたのに乳腺腫瘍になったケースの飼い主さん達は、動物病院の説明に不信感をお持ちの方がほとんどです。
もちろん、ヘンなわだかまりが残らないようにフォローはさせて頂いておりますが、獣医師と飼い主さんの認識には当然ですがズレがあるなと毎回感じます。
特に治るの意味がまるで違う事が多いです。
それを埋め合わせるのも、獣医師の仕事だなと思う次第です。
不妊手術をすべきかどうか?
ちなみにわたしは、不妊手術の是非を問われたら、望まれない出産を減らすためという意味でしたら賛成です。
しかし、病気予防を目的とした、つまり「●病を防ぐために」という理由での不妊手術は反対です。だって、人間だってそんなことをしないでしょ?
ということで、これを機会に乳腺腫瘍や不妊手術について学びたいという方は下記をご活用下さい。