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慢性腸症の原因は腸粘膜バリア機能が破壊されていること
クローン病やIBD、蛋白漏出性腸症、リーキーガット症候群などの慢性腸症では、炎症性サイトカインなどの影響によって【 腸粘膜バリア機能が破壊 】されています(上図参照)。
この腸粘膜バリアが破壊されることで、
●本来侵入するはずのないものが侵入したり
●本来出ていくはずのないものが出ていったりする
という問題が起こっています(上図参照)。
腸粘膜バリアは生命維持にとても大事
本来、腸粘膜表面には【 腸粘膜バリア 】があり、余計なものを出し入れしないようになっていて、食物アレルギーなどが起こらないようになっています。
腸粘膜バリアにとって重要な細胞間接着装置が【 タイトジャンクション 】と呼ばれる蛋白質です。
タイトジャンクションは腸粘膜バリア機能の重要な成分
腸粘膜表面に存在するタイトジャンクションは、腸粘膜上皮細胞同士を機械的に繋ぐことで「ズボンのジッパー」のようにバリアを形成し、腸内細菌や病原菌、毒素といった外来異物の侵入を防ぐ重要な役割を担っています。
先のクローン病やIBD、蛋白漏出性腸症、リーキーガット症候群などの慢性腸症では、腸粘膜表面のタイトジャンクションが何らかの影響で減り、その結果として腸粘膜バリア機能が破壊されるため、
●本来侵入するはずのないものが侵入したり
●本来出ていくはずのないものが出ていったりする
という問題が起こってしまうのです。
ですから、慢性腸症の解決の鍵は【 タイトジャンクションを増やして腸粘膜バリア機能を修復すること 】です。
EPAとDHAはタイトジャンクションを増やしてバリア機能を修復
Qiurongらの実験報告では、EPAとDHA(オメガ3脂肪酸)を腸粘膜に作用させることで、
●炎症性サイトカインの影響を抑えた
●タイトジャンクションが増え、腸粘膜バリア機能が修復された
という結果が得られました。【1】
もちろん、この結果が即
●EPAとDHAを摂取すると慢性腸症が治る!
という結論にはなりません。
●条件が変われば結果が変わるし、
●反応には個体差があるし
●確認しながらすすめるしかない
という原理原則は変わらないのですが、身近な食材で改善する可能性があることはうれしい発見ですよね。
プロバイオティクスもタイトジャンクションを増やしてバリア機能を修復
これに加えて、プロバイオティクスや、プロバイオティクスの増殖因子(餌)となるプレバイオティクスを投与すると、腸内環境の改善に伴ってタイトジャンクション関連タンパク質が増えて、腸管バリア機能の向上が認められるという報告もあるので、可能性のあることはどんどん活用していきたいものです。【2, 3】
まとめ
●慢性腸症(IBD、蛋白漏出性腸症、リーキーガット症候群など)は腸粘膜バリア機能が破壊されている
●腸粘膜バリアで重要な分子が【 タイトジャンクション 】
慢性腸症ではタイトジャンクションの数が減り、腸粘膜バリア機能が低下することで、入ってはいけないものが入ってきたり、出てってはいけないものが出ていったりしている
●慢性腸症ではEPAとDHAがタイトジャンクションを増やし、腸粘膜バリアを修復する可能性がある
●プロバイオティクスの併用も同様にタイトジャンクションを増やし、腸粘膜バリアを修復する可能性がある
●そのためにも腸粘膜バリア機能破壊の原因となる化学物質の摂取を最小限にする
参考文献
1) Qiurong Li, et al. n-3 polyunsaturated fatty acids prevent disruption of epithelial barrier function induced by proinflammatory cytokines.
2) Fernanda Cristofori, et al. Anti-Inflammatory and Immunomodulatory Effects of Probiotics in Gut Inflammation: A Door to the Body. Front Immunol. 2021 Feb 26:12:578386.
3) Xiao-Yang Ma, et al. Citation: Tight Junction Protein Expression-Inducing Probiotics Alleviate TNBS-Induced Cognitive Impairment with Colitis in Mice. Nutrients. 2022 Jul 20;14(14):2975.
IBDに関しては下記の関連記事「犬猫のIBD(炎症性腸疾患)にキャッツクローは有効? 科学的エビデンスを解説!」もご参照下さい。
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愛犬・愛猫のタンパク質漏出性腸症・リーキーガット症候群2020
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