もしあなたが、インターネットで情報収集し、愛犬・愛猫の治療を独自にやっていらっしゃるのでしたら、それが効果的な選択なのかどうかを、「この人のいうことなら納得出来る」という獣医師に確認することを強くお勧めします。
と申しますのも…
目次
愛犬の食欲にムラがあるのは腎臓病だから
以前、診療に来た飼い主さんが、
●愛犬(15歳)が腎臓病と診断されていた
●10月上旬から食欲にムラが出てきた
という状況で、ネットで「自分なりに」調べたら腎臓病末期の尿毒症の症状だと解ったので、
●腎臓に良い食材
●腎臓に良いハーブ
●腎臓に良い漢方
●腎臓に良いサプリ
●腎臓によい水
●リン吸着剤
などをネットで調べて取り寄せ、試していたら、一ヶ月経過してドンドン食欲が低下し、吐く様になってしまい、どうにもならなくなって須崎動物病院に連れて来たのでした。
うかがうと…
食欲にムラが出るほどの腎臓病状態か?
当然冒頭で問診するわけですが、
●クレアチニンが1.43(1.4未満が望ましい)
●SDMAが25を超えている(14未満が望ましい)
●血漿リン濃度は基準値で今までも超えたことはない
という状況でした。
最初にボタンをかけ間違えるとその先全部間違う…
確かに、腎臓病の末期に食欲がなくなることはあります。
そもそも腎臓は体の中の老廃物と余分な水分を尿として体外へ出してくれる調節臓器です。
この機能が低下すると、老廃物の蓄積により、尿毒症という状態になり、食欲不振や吐き気などの症状が出てくることがあります。
しかし、クレアチニンが1.43という状態は、食欲がなくなるほどの腎臓病状態ではありませんので、違う理由で食欲がなくなっているのではないだろうかと感じました。
そこで原因療法的に身体を丁寧に調べたら…
原因療法的に調べると別の原因が!
原因療法的に身体を丁寧に調べると、腎機能の問題以上に、胃の周辺に問題が疑われ、それが根本原因となって「胸焼け感」が生じ、食欲にムラが出てきたと考えられました。
そしてその原因を減らしたところ、たった一週間で食欲が元に戻ったのでした。
そして勝手に飲ませていたリン吸着剤も、飼い主さんが「これいりますかね?」と質問して下さったので、「いらないと思いますよ。」とお伝えして止めてもらいました。飼い主さんは「不必要な出費が減った!」と喜んで下さいました。
そして治療開始一ヶ月後、クレアチニンの数値も1.43だったのが1.26に下がりました。もちろん、SDMAは高値なので、腎機能は100%良好ではありませんが、これならもう腎臓病だと怯える必要はありません!
引き続き腎機能がこれ以上低下しないように、「その子に必要なこと」をしてもらうことにしました
ヘンな先入観をもち、必要のない心配をしている飼い主さんは少なくない…
最近はインターネットを通じていろいろ調べることができます。
そして飼い主さんが「自分なりに」調べていろいろ「試している」ケースがあります。
もちろん、それが的を得たことをやっていらっしゃるのならいいのですが、見当違いのことに取り組み、時間の経過とともにこじれ、取り返しのつかないことになるケースがあります。
先ほどのケースでも
●腎臓に良い食材
●腎臓に良いハーブ
●腎臓に良い漢方
●腎臓に良いサプリ
●腎臓によい水
を一生懸命調べて試していらっしゃいましたが、全くのムダと言ってもいいような状態でした。
だって、腎臓病が末期で食欲不振になっているわけではなかったのですから…
獣医師はそんなケースをたくさん経験してきているので、ときに「飼い主さんの勝手な見立てで突っ走って、悪化した犬猫」を診ると、「何でそんなことをやったんだ!」「なんでこんな状態になるまで放っといたんだ!?」と怒る方もいらっしゃるわけです。
でも、それはその獣医師が情緒不安定でも、ご機嫌が悪かったわけでもなく、犬猫を思うからこそそういう態度になってしまうのです。
ただ、私も「医者に依存したくない」タイプの人間なので(怒られそうですが)、飼い主さんの気持ちは理解出来ます。
そこで、双方の立場を考慮して…
念のため、プロに確認する習慣も大事!
双方の立場を考慮して、仮に飼い主さんが適切に見立てられたとしても、勝手に突っ走らずに、「これであってますかね?」とプロに確認する習慣をつければいいと思うのです。
この飼い主さんも、愛犬の血漿リン濃度が高いわけではなかったのに、ネットで「腎臓病にはリン吸着剤が必要」という記事を読んで、通販で購入していらっしゃいました。しかも「これって要るのかな?」と疑問に思いながら…。
時間が経つとこじれる
ご存知の通り、体の不調は放置すると時間が経つにつれてこじれることがあります。
飼い主さんがネットで調べてなにかを試している間に、それが効果的でなければ放置したのと同じになり、良かれと思ってやったことが裏目に出て後悔する飼い主さんを、私も沢山みてきました。
私はこのような状況は単に犬猫がかわいそうだと感じます。だから、早い段階で確認して欲しいなと思うわけです。
もちろん、須崎動物病院に来いといっているわけではなく、あなたが「この人の言うことなら納得出来る!」と信頼できる獣医師に確認して欲しいのです。
実は先日お越しになった飼い主さんが、このケースとほぼ同じ状態だったので、過去のケースを思い出しました。こんなケースがあることを知っていただきたく、注意喚起としてご紹介いたしました。
復習ですが、
●腎臓病と診断されていた15歳の犬がいた
●食欲にムラが出てきた
●ネットで調べたら腎臓病が進行して食欲不振になるらしい…
●腎機能を高めなければ!
と飼い主さんは思っていたが
●血液検査で食欲不振になるほどの腎臓病状態ではない
●原因療法で調べたら胃の周囲に原因が疑われた
●その原因を減らしたら…
●食欲が元に戻った!
つまり、腎臓病で食欲不振になる事は確かにあるけれど、目の前の子は腎臓病が原因で食欲不振になっているわけではなかった
というお話でした。
する必要のない心配や対処をする前に、プロに確認する習慣を身に付けることをオススメします。
取り越し苦労で治るはずだった時期を逃して後悔しないためにも!
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