よく、「歯磨きをしているのに、口臭やお皿のヌルヌルがとれない…」というご相談を受けます。
この様な場合、口の中のヌルヌルする原因が取り除けていないと考えます。
考えられる理由としては、診療経験上
- 使っている道具の問題
- 道具の使い方の問題
- やり方の問題
のどれかなことがほとんどです。
目次
使っている道具の問題
当院では、このサプリやケアグッズがこの子に合うかどうかを機械を使ってチェックしておりますが、「なぜこれを選んだの?」と機械に掛けるまでもなく首をかしげるような口内ケアグッズを使っていらっしゃる方が珍しくありません。
なぜ、これを選択したのかを伺うと
「良さそうだった」
「安かった」
「簡単そうだった」
という声に集約されます。
しかし、1ヶ月経っても状況が大きく変わっていないなら、やはり口内ケアのプロのアドバイスを聞くべきでしょう。
物質に効果が期待できるかどうかは
「成分が入っているかどうか」
ではなく、
「成分が有効濃度で入っているかどうか?」
が重要です。
そもそも、「効くか効かないかは濃度による」ので、「有効成分が入っています」と書いてあっても、薄かったら意味がないのです。
当院でチェックしていると、
●安くて薄いサプリメント
が多いと感じます。
口内ケアの道具も同じで、実験では高濃度でやったが、販売は薄めてあるというものが残念ながらあるようです。
「良さそうだった」という製品が、大量生産前はきちんとした濃度で作成し、データが揃ったら…なんてこともあるようです。
私は「価格相応」だと思っておりますので、判断基準は効果であり、安いことではないと考えております。
いくら安くても、効果がないのならば無駄な出費です。
また、「簡単だった」というグッズも巷にはありますが、「なぜ同じ様な商品が人間では無いのか?」と疑問に思ってみて下さい。
なぜ無いか?
「そういう事」だからかもしれません。
道具の使い方の問題
また、本来効果が期待できる道具でも、使い方次第では、効果が出ないこともあるでしょう。
薄めたり量を減らしたり
節約のためか、規定の量を薄めて使ったり、量を減らしたりして使用して「効果が出ない…」と悩んでいる方をよく見かけます。
少しずつ様子をうかがいながら…
少しずつ様子をうかがいながら始める方がいらっしゃいますが、やるときは最初にドーンとやるものです。特に、口内ケアの場合は、口内細菌の入れ替わりが重要ですので、少しずつ様子をうかがいながら取り組んでいたら変わるものも変わりません。
もちろん、慎重に事を進めるべきケースもございますので、そういうときは口内ケアのスペシャリストでもある獣医師に相談すべきです。
そして、日々の実践の相談は、獣医師でなくても、口内ケアを実践されている先輩飼い主や、ペットのアドバイザーに相談するのもいいでしょう。
使う順番
使う順番もあります。
例えば、「乳酸菌→クマ笹エキス」の順番より、「クマ笹エキス→乳酸菌」の方がいいです。なぜなら、クマ笹エキスは殺菌作用があるため、先に乳酸菌を入れてしまったら、クマ笹エキスで意味がなくなるからです。
また、「クマ笹エキス→乳酸菌」と順番はいいのですが、クマ笹エキスが濃度濃く口内にある状態で乳酸菌を入れても、やはり乳酸菌の意味がなくなってしまいます。
そういうときは、一度水を飲ませたり、スポイトやシリンジ、洗浄ビンなどで口内に水を入れたりして、薄めてから次のステップに入る必要があります。
楽をしようとして
それと、「口を触らせてくれないから…」と、ごはんに口内ケアの液を垂らして食べさせているかたもいらっしゃいますが、そんな方には私はこう質問することにしています。
「僕が、歯磨きが面倒くさいので、夕食の牛丼に歯磨きペーストをニューッと絞って一緒に食べていたらどう思います?」
こう質問すれば、
「あぁ、そっかぁ…。ですよね…。」
とわかっていただけます。
口を触らせるように家庭犬トレーニングを受けるべきことであり、相手のご機嫌を伺う話ではございません。
この様に、同じ道具でも、使い方によっては意味をなさないこともございますので、十分お気を付け下さい。
口内ケアのやり方の問題
これには、
- 独りでやるやり方を知らない
- 口を触るのを遠慮している
- 最初のヌルヌルが取り切れていない
- 歯石がすごすぎる
独りでやるやり方を知らない
通常は「押さえる人」と「磨く人」の二人で取り組むのがいいのですが、独り暮らしだとなかなか難しかったりします。
そんなとき、犬の真っ正面から歯ブラシを持って近づき、犬はゆっくり後ずさりし、それを飼い主がまたゆっくり前進し、犬はさらにゆっくり後ずさりし…と、家の中で「能」を踊っているような状態になって追いかけっこをしているケースもあるようです。
そんなときは、お近くの動物病院や、口内ケアを指導している方から「独りで磨く磨き方」を教わることをオススメします。
文字では伝えにくいので、ぜひ、そうしてください。
口を触るのを遠慮している
口の状態が酷かったりすると、口を触られるのが嫌で怒り出すペットがいます。なんでもそうですが、いきなり口を触ろうとするのではなく、徐々に触れるようになれさせることが重要です。
最初のヌルヌルが取り切れていない
乾綿で口の中のヌルヌルを取り除くステップで、そのヌルヌルが取り切れていないと、磨ききれないことがあります。
必ず、キレイにしてから口内ケアを始めましょう。
歯石がすごすぎる
歯石の量がすごすぎると、そこが菌の増殖場所になり、結果的に磨いても磨いても口臭とヌルヌルが変わらない…ということがあります。
そんなときは、結石除去する必要があります。
しかし、高齢だと難しいことがありますよね…。
そんな時は、次の事実を知っておくと良いでしょう。
歯石があっても歯肉炎がない状態を作れる
以前、老齢のため、全身麻酔での歯石除去を全ての動物病院で断られた犬がいました。
その飼い主さんは「仕方ない!口内ケアをするしかない!」と気合いを入れたところ、歯石があるのに、歯肉炎は全くなくなり、かかりつけの先生に驚かれたそうです。
この様に、飼い主さんの頑張り次第で、歯石がついていても口臭・ヌルヌルが無くなるという状態に出来ます。
出来る範囲で結構です!
効果的な方法で取り組んで下さいね。
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